大市民日記1~6
著者の柳沢きみおが描き続ける大市民シリーズに連なる作品。
作者の分身的な位置づけである主人公の人気小説家・山形鐘一郎。
貧乏的な生活を楽しみながら、彼独自の視点で人生の楽しみを巡る
小冒険が描かれた連作漫画シリーズで、もう三十年近く続いている。
大市民日記は2005年から2010年頃まで描かれていたと思う。
もう休刊してしまった月刊誌に掲載されていて、連載時にも読んでいた。
今回電子書籍化の折、安くなっていたので全巻まとめ買いして読んでみた。
従来の大市民シリーズと違い「日記」と銘打っているだけに
普通の漫画の形式ではなく、主人公山形の日々つれづれに思うこと
(主に世間に対する怒りや憤り、自然の移り変わり)や食事内容
などが独白で綴らる形式となっている。
このため、従来の大市民シリーズを期待して読むと失望するかもしれない。
作品内容は時事ネタが多くて、既に風化して何のことだか分からないケースも多い。
ストーリー性はほぼなく話はなにも転がらず、ほぼ同じことに文句をいい、
ほぼ同じ初物を食い、季節が巡っているという感じ。
要は以下のローテーションである。
桜はいい。
梅雨はうっとうしい、
夏は暑い
秋は素晴らしい。
果物はうまい。
蕎麦はうまい。
白菜鍋はうまい
鍋の翌日のおじやもうまい
寿司はうまい
酒はうまい
日本人は武士であれ
恥をしれ
人生はプラスマイナス論
工夫して生きることが楽しい。
本当にこれを繰り返しているだけ(あと愚痴)なので、月一で月刊誌を読む分には
期間が空くので、まあ大丈夫だった気がするが、
単行本化され、連続で読むともはや苦痛でしかない。
後に知ったが、著者初の文章でのエッセイ集と
内容まるかぶりだしなぁ。
山形の文句についても共感できる物ならいいが、
喫茶店で煙草を吸うなとかは、オーナーが許可している店なら
言いがかり以外のなにものでもないだろうし、
ダウナー気分になってくる。
担当編集もよくこれで連載をゆるしたな。
ネームチェックとかなかったのか、
やりたいようにやらせるのが連載条件だったのか。
ちなみに、山形が言及した(文句含む)事柄が現在どうなっているかを
思いつくままあげてみる。
私的な判断では以下のとおりの状況だ。
ダルビッシュ→メジャー行き
F1→人気回復せず
亀田一族→消えた
プロ野球→人気凋落
巨人軍→やや人気回復
韓流ブーム→消えた
大食い番組→消えた
TBS→回復
ゴルファー宮里藍→話題にならず
ゴルファー石川遼→活躍中
ホリエモン→健在
孫正義→健在
三木谷浩史→健在
禁煙場所→増加傾向
パソコン→スマホ使用者増
携帯電話→スマホに移行
ソーラン節→増加傾向
阿波踊り→増加傾向
消えてゆくといった事柄はけっこう消えていったね。
日本の劣化をすこしでも食い止めるため
頑固じじいが同じことを繰り返し言い続けているというスタンス
だったのかもしれないが、
山形にはいつまでもダンディな男であって欲しい気がするなあ。